あるところに、生まれたばかりのヒナがいました。

ヒナはまだまだ子供で、世間を知りませんでした。

自分の棲み家から見えるものが全てだと思っていました。

毎日、親鳥が大空をとんでいるのを、

「いいなぁ、いつかはじぶんもあんな風に飛びたいなぁ」

と思ってみていました。

毎日、毎日、ヒナは親鳥を見ていました。

見ているうちに、だんだんと、ヒナはこう思うようになりました。

「自分も飛べるに違いない。父と母がとんでいるのなら、自分も飛べるに違いない。」

しかしヒナの羽はまだ未熟で、飛べる筈がありません。

それにもかかわらずヒナは、親鳥が空を自由に羽ばたく姿をみるにつれ、自分は飛べるのだと、いつか絶対に、あたりまえのように、何もしなくても、そうなるのだと、高慢にも思い込んでいきました。

かつて親鳥が、大空に飛び出して行くため、自分の力で生きていくために、必死になって小さな羽根を羽ばたかせ、風に乗れず、悩み苦しみ努力した事も知らずに。

ヒナは自分の未熟さに気がついていませんでした。

親鳥の偉大さや、自分の高慢さ、そしてなにより、飛ぶ努力をしないヒナは絶対に飛べない、という事に気がついていませんでした。

そしてそのヒナはまさしく俺です。


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